失業して収入が途絶えたとしても、生活するにはお金が必要です。
そんなときのための公的保障として、失業保険があります。今回はもしも失業してしまった時に生活を支えるために役立つ失業保険についてお話します。
失業保険とは?受け取れる条件とは?
失業保険とは、公的保険制度の一種で、正式には「雇用保険」と言います。加入者は、失業した場合や自己都合での退職にあたり、「失業手当(正式には基本手当)」を受給することができます。離職または失業した場合、次の就職先が決まっていない方が安定した生活を送りつつ転職活動するにはお金が必要です。雇用保険で得られるお金は、新しい職に就くまでの経済的支えとなります。
ただし、離職したすべての人が受け取れるというわけではありません。離職前の勤務先で雇用保険に入っており、なおかつ一定の条件を満たした人のみが対象です。
その条件は離職理由によっても異なりますので、それぞれ確認していきましょう。
■一般の離職者の場合
一般の離職者には、自己都合での退職(転職を理由とした退職、独立など)が該当します。
その場合、「雇用保険の加入期間が離職日以前の2年間で通算12ヶ月以上あること」が失業手当を受け取る条件となります。基本的には転職のための離職はこちらに分類されます。
■一般の離職者の場合特定理由離職者の場合
自己都合での退職であっても、自分の意思に反する正当な理由がある場合は特定理由離職者となります。例えば
①有期労働契約の更新を希望したが、認められず離職した人
②病気などでこれまで通りの通勤や業務を続けることが不可能、または困難になった人。
③②の身体状態から新たに与えられた業務を遂行、出勤することが不可能、または困難である人。
④自分の意思に反して引っ越しをしなければならなくなった人。
⑤父・母の扶養や介護など、家庭事情の急変により離職した人。
⑥企業の人員整理などで、希望退職者の募集に応じて離職した人。
などの理由があります。この場合失業手当の受給条件が緩和され、「雇用保険の加入期間が離職日以前の1年間で通算6ヶ月以上あること」となります。
なお、上記のような理由での離職であれば必ず特定理由離職者となるわけではありませんのでご注意ください。
■特定受給資格者
先述の2つの離職者とは異なり、会社の倒産や解雇(懲戒は除く)などの理由で、再就職に向けた準備が十分にできていない状態で離職を余儀なくされた人があてはまります。
この場合、受給資格は特定理由離職者と同じく、「雇用保険の加入期間が離職日以前の1年間で通算6ヶ月以上あること」となります。
失業手当は「仕事に就く意志と能力がある方」であることも受給の条件になります。
そのため、すぐに働きに出られない、出るつもりがない以下のような場合は受給の対象外になります。
・怪我や病気の治療のため、すぐに仕事に就けない
・妊娠・出産・育児のため、すぐに仕事に就けない
・定年などの理由で退職し、しばらくは休養する予定である
・結婚を機に退職し、しばらくは家事に専念する予定である
また、雇用保険は一定条件を満たしていれば雇用形態に関わらずに受給できるため、アルバイトやパートであっても受け取ることが出来ます。その場合、雇用期間の定めがない、もしくは雇用期間が31日以上であること、1週間の所定労働時間が20時間以上であることが求められます。
失業手当受給までの流れ
では、実際に失業手当を受給するまでの流れを見てみましょう。
①必要書類を揃える
失業手当を受給する場合に必要な書類を揃えます。主に必要なものは
・雇用保険被保険者離職票-1,2
・マイナンバーカード
ない場合は通知カード、もしくは番号が記載された住民票と、運転免許証や保険証等の身分証明書等
・証明写真
・本人の印鑑
・本人名義の預金通帳やキャッシュカードなど失業手当の振込先が分かるもの
どの書類が必要か不明な場合はハローワークインターネットサービスで確認することが出来ます。
②ハローワークで求職を申し込み、離職票を提出(受給資格の決定)
書類等の準備が整ったら、現住所を管轄するハローワークへ行き、以下の手続きをとります。
・求職申込
・必要書類の提出
・雇用保険説明会の日時決定
失業手当を受け取ることが出来るのは、先述の通り仕事に就く意志と能力がある方です。そのため、再就職の意思を示すため求職の申し込みが必須です。この際に、次のステップとなる雇用保険説明会についても担当者から案内がありますので、日時などをしっかりメモしておきましょう。
③雇用保険説明会への参加
求職申込をした際に担当者から指定された日時に、雇用保険説明会に参加します。説明会の講習を受講すると、失業保険の仕組みやハローワークで行っている再就職支援の話を聞くことが出来、受給に必要な雇用保険受給資格者証と失業認定申告書を受け取ることができます。ここで「失業認定日」が決まります。
④失業認定日にハローワークへ行く
失業認定日にハローワークへ行き、失業認定申告書を提出して失業の認定を受けます。失業の認定を受けるには、月2回以上の求職活動が必要で、失業認定申告書に実績を記載する必要があります。
求職活動として認められる例としては
・求人に応募する
・ハローワーク等が行う職業相談、職業紹介を受ける
・許可・届け出のある民間、または公的な職業紹介所、労働者派遣事業所が行う職業相談、職業紹介、求職活動セミナーを受ける
・再就職に資する各種国家試験、検定等の資格試験の受験
などがあります。
⑤失業手当の受給
失業認定を受けてから約1週間後に指定の口座に失業手当が振り込まれます。
失業手当を受給し続けるためには失業認定日ごとにハローワークで失業認定を受ける必要があります。
なお、失業手当の受給には離職の理由によって給付制限が設けられる場合があります。
受給資格決定からの待期期間7日間はすべての受給資格者に共通で、特定理由離職者、特定受給資格者の場合は1回目の失業認定日に失業認定を受けるとすぐに失業手当が振り込まれますが、一般の離職者・懲戒解雇による退職者の場合、更に待機期間満了の翌日から2ヶ月間の給付制限があるため、3回目の失業認定日まで待たなければなりません。
そのため、特定理由離職者の自由に当てはまらない自己都合の退職の場合は、給付制限期間中の生活に必要な資金を貯めておくなど、準備が必要になります。
失業手当はいつまで、いくら受け取れる?
失業手当は、次の仕事が決まるまでの間、定められた「所定給付日数」を限度として基本手当の支給を受けることが出来ます。失業認定を毎月受ける必要がありますが、その期間中は収入が0になることはありませんので、安心して再就職活動に臨むことが出来ます。
所定給付日数は離職理由、離職時の年齢、雇用保険の加入期間によって決まっており、以下の通りになっています。
雇用保険で受給できる1日当たりの金額「基本手当日額」は以下のように計算されます。
賃金日額 = 離職前6ヶ月間に支払われた給与の合計額÷180日
基本手当日額 = 賃金日額×50〜80%
労災保険の休業補償を受け取るためには、以下の条件を満たす必要があります。
給与の中には通勤手当や役職手当などの各種手当は含まれますが、ボーナスは含まれません。
また、基本手当日額の下限額は全年齢共通で2,059円(2021年8月1日からは2,061円)、上限額は年齢区分ごとに異なり、次の表のとおりです。
再就職手当とは?
失業保険には、再就職手当という制度もあります。こちらは、失業手当の受給資格がある人が、所定の給付日数を残して安定した職業に就いた場合に支給されます。
こちらは、以下の条件を満たした場合に受給することが出来ます。
・受給手続き後、7日間の待機期間満了後に就職、または事業を開始した。
・就職日の前日までの失業認定を受けたうえで、基本手当の日数が所定給付日数(先ほどの表の日数) の3分の1以上であること。
・就職した事業所が前に勤務していた事業所と同じではない、前の事業所と密接な関わりがないこと。
・給付制限があり、待期期間満了後1ヶ月の期間内に再就職した場合は、ハローワークか職業紹介事業者の紹介で就職したこと
・1年以上勤務することが確実であること。
・原則として雇用保険の被保険者になっていること。
・過去3年以内の就職で、再就職手当または常用就職支度手当の受給を受けていない。
・受給資格決定前から採用が内定した事業主に雇用されたものではない。
・再就職手当支給決定の日までに離職していない。
再就職手当の給付金額は所定給付日数の3分の1を残して就職した場合は基本手当日額×所定給付日数の支給残日数×60%、所定給付日数の3分の2を残して就職した場合は基本手当日額×所定給付日数の支給残日数×70%となり、早く再就職をすればするほど給付率が上がるという、早期の再就職を支援するための制度でもあります。
まとめ
今回はもし失業してしまった時のセーフティネットである失業保険(雇用保険)についてご紹介しました。基本手当受給手続きは複雑ですが、雇用保険説明会に出席し、受給資格者のしおりを読むことで、手続きの流れをつかむことが出来ます。もしも失業してしまった際には、まずハローワークに、失業手当の受給について相談してみることが重要です。
この他にも様々なリスクに対応できる社会保険についてご紹介いたしますので、またご覧いただき、お役立ていただければ幸いです。